3600秒のミライ

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再びボールを拾って急いでコートに戻ると、コートの中で皆が輪になって話しているのが見えた。 「……ねぇねぇ今、武田君、ヒカルちゃんの事見てたよ~!」 「絶対、間違いないよ~」 真面目に練習してるはずの部員さえ、やっぱりネットの向こうの“武田君”の言動が気になるようで。 だけどその言葉の意味。 あたしは何も分かってはいなかった。 「……ふぅん?そうなの?」 “武田君という男バス部員があたしを見た。” 別にそれはあたしにとって、重大事件ではない。 「え~、ヒカルちゃん!嬉しくないの」 「え、いや、あの……」 別に、嬉しくなんか、ない。 だってあたしは、皆の人気者の武田君という人に興味がない。 「て言うか……ヒカルちゃんて。本当、変だよね……」 その一言は あたしにとって誉め言葉なのか、貶されているのか。 その時は何も理解することが出来なかった。
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