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僕らの出会いは、最悪だった――。
四月九日。始業式を前日に終え、まだ休みの気分が抜けないまま、僕は高校二年生として初めての授業を受けていた。といっても、ほとんどの時間が先生や生徒の自己紹介、それに今後の話にあてられたから、授業らしい授業はしてないんだけど。
それでも、新しい教室、新しい先生、そして、新しいクラスは何と言っても新鮮そのものだった。
「おーい雨見、今日どっか寄ってくか?」
去年から同じクラスだった佐藤に声をかけられた。
遊びに行きたいのは山々だけど……。
「ごめん、今日は母さんが帰ってくるのが遅い日だから、僕が夕飯をつくらなきゃいけないんだ」
「――そうか。お前も大変だな」
「ううん、もう慣れたよ」
僕の家は母子家庭で、母さんが一人で僕と兄さんを養っている。兄さんが奨学金で大学に行き、アルバイトをはじめてからは少し楽になったみたいだけど、それでも今日みたいに母さんが夜遅くまで仕事をしなくちゃいけない日がたまにある。
そんな日は僕と兄さんで家事を分担して、少しでも母さんの負担が減ればいいな、と思っている。
「あ、そうそう」
と、また佐藤。
「悪いんだけど雨見、ひとつ頼み事していいか?」
「頼み事? 何?」
「いやぁ、本を図書室に返しておいてほしいんだが……」
「本? そんなの自分で返しなよ……」
「そりゃそうなんだが、図書室の司書の先生、ウチの国語の担当だろ? でも俺、休みの課題まだ提出してなくてさ、顔あわせづらいんだよ……」
「…………」
「なっ? 頼むよ雨見、今度ジュースおごるから!」
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