――紫陽花――

6/9
前へ
/9ページ
次へ
 僕は、受付の方へと向かった。 「すいませーん、本の返却をしたいんですけど……」 「あぁ、はい、こちらにどうぞ」  そう言って僕の対応をしたのは、眼鏡をかけた女子生徒だった。リボンの色で僕と同学年だとわかる。だったら、敬語をつかう必要はないかな。 「この本、お願い。僕じゃなくて佐藤って生徒が借りた本なんだけど……」 「少々お待ちください、お調べしますので」  そういうと彼女は受付のパソコンを操作し始めた。  どうでもいいことだけど、彼女も僕のネクタイの色で同級生だとわかっているハズなのに、敬語で他人行儀な対応をしてくる。もともとそういう性格なのか、はたまた図書委員でそういった決まりでもあるのかな。 「――はい、ありました。佐藤さんで、アーサー王と円卓の騎士ですね」 「あ、うん。そう」  僕は彼女に本を渡す。  その瞬間、二人の指が触れ合った。  ひんやりとしてなめらかで、とても女性らしい綺麗な指だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加