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「……邪魔」
煌が行く手を塞ぐ郁を思い切り睨み上げる。隣に立っている彼女らしき人は視界に入れない。
濃厚なキスを交わす男女に真っ向から不快感を表す人間に郁はほくそ笑む。
今、まさに愛を語らっていたであろう彼女の胸を人差し指で突き飛ばした。
「早く消えて」
とろけるような美声であり得ない要求をする郁に愛が殺意に変わる。
女が手を振り上げる。
と、同時に煌が郁を叩いた。
右頬にクリティカルヒットした煌のビンタは乾いた音を立てる。
「最低」
行き場を失った美女の右手と怒りを上回る煌の冷ややかな態度に彼女はモヤモヤを抱えたままその場を去った。
一夜を共にしたであろう相手が見えなくなると郁はくっくっと笑いを噛み殺す。
「笑うな。私は怒ってる」
「だって、最高」
「あんたは最低」
「……同じこと、してあげよっか?」
茶化す郁に対して、煌の沸点の低い怒りは簡単に頂点に達した。
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