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「……んっ……」
眩暈がしそうなほど色っぽい吐息が隣の部屋の窓の隙間から聞こえた。
身体の内からゾクゾクする。
速足で歩いていた足がその場から動かなくなった。
雪が、しんしんと降り続く12月中頃。季節外れに引っ越してきたのはクールな面立ちの見目麗しい大学生の青年だった。
小学生の早川煌からすれば、彼は大人であり、どこか浮世立ちした存在であった。
顔を合わせれば挨拶をし、世間話をする、ありふれた間柄。それ以上でも以下でもない、お隣さんという関係である。
そのお隣さんの部屋から、間違いなく、彼の声がした。
しなやかな、含みある、声。
煌は思わず唾を呑んだ。
無意識に唾を何回も呑んだ……のにも関わらず、異常に喉が渇いた。
リピート再生される艶やかな声に身体の熱が暴れる。
煌は両腕で自分を抱えこんで自由にならない暑さに対抗してみた。
「ぁ……」
また、甘ったるい声がした。
まるで、子猫が親猫に擦り寄るかのような、可愛い鳴き声だった。
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