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私は平凡なる人間である。
彼女が呟いた。
名前は桐野 雪月花。因みにつきゆきはな、と読む。
愛読書は太宰治の『人間失格』。私はギリギリ失格だ、と感じる。
ここまで一息に喋って彼女は――雪月花は最後に一言断言した。
「世界は壊されるべきだと身にしみて感じる」
爆弾だな、と思った。
ばちばちいって危険性を秘めた今すぐに爆発しそうな爆弾だ。
この瞬間から雪月花に語り手として認定された私は楠木 さくや。古事記の此花咲夜姫に親近感を覚える中学生。
コノハナノサクヤ姫っていうのは人間が短命になった理由のお姫様。
古事記を愛読書とする私は全文暗記している。
ふんっ、と鼻を鳴らして雪月花が席につく。
桜がさわさわ、と揺れている。
春を告げる女神でもある、コノハナノサクヤ姫が頑張ったのかもしれない。
――新学期。
私は新しい季節に浮かれていた。
だから雪月花に目をつけられたのだ。
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