雪月花

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「『断罪者』はあなたのお仲間じゃないの」 私が言い返す。 絶対に協力なんてしたくなかった。特に『暁の眠り』には。 ――語り手がこんなに動揺していては意味が分からないだろう。 しかし、それでいいのだ。 この理を巡る関係は知らない方が人生を楽しめる。 私は不運にも小学生に知ってしまい、『愚者』《グラクシール》になった。 「断る。『愚者』は愚かなりにも考えたのよ」 つまらなそうに雪月花が鼻を鳴らした。 「確かに愚かね。『暁の眠り』《アルシェイラ》に逆らうなんて」 アルシェイラは怖い。無所属を貫いてきた代々の『愚者』には脅威だ。 しかし『暁の眠り』《アルシェイラ》にも、 『夜明けの目覚め』《キリシスタン》にも屈しなかったのも事実。 私もそれを守らなくてはならない。 「『愚者』は『愚者』のままなのね」 雪月花が呟いた。 羨ましい、と。
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