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一瞬怯んでしまった己を奮い立たせ、剣の柄を強く握りそのまま抜剣する。
「なにが起きてるか分かんねーけど、やるしかねーだろ!」
「竜騎士にビビる俺様じゃねー!なんでもかかってきやがれ!!」
恐怖を乗り越えた二人も時の声をあげる。
各々武器を構え、敵がいるであろう前方に向かって、よりいっそう力を込めて駆け出す。
走ること十数秒、目の前に広がったのは地獄とも絶望とも言える惨状だった。
四百人の生徒を護衛するため百数十人の騎士の護衛がついたが、確認できるだけでも三分の一近くの騎士が呻き声をあげて地に臥しているか、すでに絶命していた。
「…あぁ……!……良かった……任…務を……遂げれ…る」
声のする方向を見ると一人の騎士が四つん這いになりながらこちらに近づいてきた。
見ると体中傷だらけで、特に首の出血が酷い。
すぐに止血しないと直に倒れてしまうだろう。
「どうしたんスか!?」
フィルゴが近寄り、騎士の体を支える。
「……君は…学院の……生…徒…か?……早…く……逃げな……さい……!」
息絶え絶えの騎士はフレインの方を向き、
「……伝…令…!…帝……国…兵の……奇襲……で…す……!…どうか……、……前線……で……兵たちの…統…率を……」
そんなことをなぜフレインに?と思ったが、フレインの姿を見て納得した。
いまフレインは上級騎士の鎧を身に纏っている。
恐らくこの騎士は意識が朦朧として、輸送隊に存在しないはずの上級騎士に伝令を伝えたのだ。
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