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そろそろ引き上げる頃合いだな。
十分に敵を蹴散らしたし、時間稼ぎもした。これ以上先には騎士たちも居ないらしいから、無理に戦う必要もないはずだ。
「ウェルト!」
隣で戦うウェルトは、声に気がつきこちらを向く。
「分かった!後退しよう」
ウェルトも同じことを考えていたらしく、言わずとも察してくれたようだ。
ウェルトが走り出したのを確認してから、こちらも後を追った。
その際に、「騎士が背を向けてんじゃねー!!」などとやつらは騒ぐが、俺達はまだ学生で正式に騎士という訳ではない。と無意識に屁理屈を考えながら足早に撤退する。
「フィルゴ!壁側に寄れ!!早く!!」
ウェルトが言うや否や、突然俺の腕をつかみ、壁側に引き寄せた。
「なんだよ!?早くずらか……!!」
言い終える前に、俺たちが先程まで走った道を、物凄い勢いで何かが通りすぎていく。
馬……、いや騎兵!?その数およそ三十。王国の象徴であり、主戦力の一つでもある騎兵たちが我先にと敵の集団に切り込んでいく。
「なんでこんなに馬が……どうやって集めたんだ?」
「多分馬車を引いてた馬だな。鍛えられた軍馬に比べればそれほど速くない。だけどよく思い付いたな!」
俺の疑問にウェルトが感想付きで答える。
「お前ら、よくやったな!」
この低音ボイスの主は、確かガルウィン隊長のものだ。
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