悪夢#向けられる牙

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~~漆黒の鎧に身を包む少年~~ なんとか上級騎士を演じきり、もう逆転するところまで来ている。だが最後まで気を抜けない。 なぜならいまだに竜騎士が上空を旋回したままだからだ。 奴をどうにかして倒さないとな…。 だが、どうする?奴は空を自在に飛び回る。対してこちらは足場が悪い。 こちらには魔術を使えるものは少ない。弓の腕前がいいものがいるわけでもない。 つまり空に逃げられればこちらからできることは限られてくる。 出来れば俺自身の手で倒すのが望ましいだろうな。騎士たちの士気にも影響してくるだろう。 そして、二人には竜騎士とは戦って欲しくない。 「それにしてもフレイン、よくバレなかったな?」 焔(ホノオ)のような赤髪がトレードマークの親友、ウェルトが剣の血を拭い、鞘に納めつつ尋ねてきた。 「あぁ、あのときは竜騎士やら何やらでみんな忙しかったしな。だけどちょっと考えれば分かりそうなものだけどな…。こんな若い上級騎士がいるわけないってね」 そう、バレてもおかしくはなかった。だいたい上級騎士がこんな辺鄙(ヘンピ)な場所に来るわけがない。 「ガルウィン隊長と話したんだろ?あの人、俺等三人のこと知ってるみたいだったぜ?なんで気づかなかったんだろうな?」 フィルゴは頭の上に疑問符を浮かばせながら言う。 「フィルゴ。お前隊長に向かって、本当に中級騎士ですか?って言えるか?」 「無理無理無理!絶対に無理!!減点されちまうよ!!!」 ウェルトの言葉にあたふたするフィルゴ。相変わらず例え方が上手いな、ウェルトは。 「それと同じさ。気づいたとしても上官に向かって、本当に上級騎士ですか?なんて質問するわけないだろ?」 「あ、なるほど!」
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