悪夢

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「さっきは貰うと言ったが、訂正するぜ。武器を『拝借』させてもらう。」 ニヤリとフレインが笑う。 それはいつものように、『良からぬこと』を考えている表情だ。 「騎士から…か?」 疑問を口にする。 「誰も騎士から借りるなんて言ってないぜ?ほら、アレだよ。」 指を指すフレインの顔がさらに歪む。 そして指指す方向を見て驚く。 「お、俺!?」 俺の反応を見て、してやったり、とにやけるフレイン。 「ハハハッ!違う違う!!後ろだよ、ウ・シ・ロ!!」 俺は振り返る。 そして顔から血の気が引くのを感じ取れる。 俺が敢えて選択肢に入れなかったことを…。 フレインはやろうとしている。 「おまえ…!?まさか!!」 「そう!その通り!!ご名答!!!『積み荷』から頂くのだ!!!!」 ハハハハハッ!!と笑うフレインだが、笑い事じゃない。 いくら非常時とはいえ、積み荷から物を盗るなど信じられない。 だが、フレインはさも当たり前のように荷馬車に入り込む。 「おい!流石にヤバイって!!後で怒られるぞ!?」 「……相手が竜騎士なら…、まず生き残ってるかどうかだな…。」 フレインはガサガサと積み荷を物色しながら冷たく言い放つ。 俺は言い返せなかった。 相手が本当に竜騎士なら…、俺たちは生き残っているのだろうか? 「おっ!?ラッキー!!この荷馬車、指揮官用だってさ!!!」 先程の声色は嘘だったかのように、楽しげにさらりと恐ろしいことを言う。 一介の学生である俺らが、前線の城塞指揮官の備品を漁っていると知られたらどうなることやら。 学院の退学は免れないだろう。 だが指揮官クラスの武器を見てみたいとは思う。 「ほら、ウェルト!」 そう言って何かを放ってくる。
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