34人が本棚に入れています
本棚に追加
窓を、そろそろと開けてみた。
何の種類か知らないが、常緑樹の枝が風に揺れている。細長い葉っぱが、優美にそよいでいる。
植物を、こんなに間近に目にすることがあっただろうか?
あったにしても見てはいなかった。
そんな心の余裕が無いままに、ぎりぎりで生きて来た。
人は窮地に追い詰められると、そんな、ささやかな季節の彩りさえ楽しめないのだ。
不意にユニットバスのドアが開けられて風が入った。
「えっ?」
最初のコメントを投稿しよう!