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いや、当てなど無いのだ。
福島から逃げて来て、短期の契約や日雇い労働で食いつないで来た。
妻は、海の近くに建てた新築の家と共に津波に呑まれてしまった。
子供が秋に産まれる筈だった。
妻の様子を見に来ていた両親も巻き込まれた。
一帯が原発事故の避難区域に指定されて以来、実家には戻っていない。
私には、もう帰る田舎は無いのだ。
「魔獣を5人、殺したんだぜーっ」
「えーっ? 5人もか? すげーっ」
小学生の男の子達が私を追い越し、道を渡って行く。
私は連られるように歩き出した。
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