次の十字路

彷徨

だが、漁港での募集は締め切られていた。

漁の経験があるなら船に乗せるという。

建築図面のトレースと修正しか能の無い私には、お門違いだった。

就職情報誌を頼りに南下しながら仕事を探して歩いた。

しかし、住所不定では原則的に採用は困難だと言う。

宿代を節約する為に一晩中、歩き続けて県境を越えたこともあった。

食事はコンビニのおにぎりで済ませ、公園の水を飲み、砂場に身を横たえた事もあった。所持金が無い訳ではない。将来への不安があって宿代に浪費出来なかった。

名古屋の怪しげな派遣会社で、ようやく仕事にありついた。

冷凍庫内の商品の出し入れだった。