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今にも泣き出しそうな春海を、ただじーっと見ていた。
「……誠は慰めの言葉をかけようとか思わないわけ?」
肩がビクッと跳ね上がる。図星だから。
「え、いや……そういう訳じゃ…」
父親譲りの、少々頑固な性格のため、素直になれない。
私の返事を聞いてか、春海は考える素振りを見せる。
「…じゃあ罰としてタメ口にして」
「えぇー…。春海は年上だし…」
両手をブンブンと振ってみせる。
すると春海はプイッとそっぽを向き、
「………じゃあいい。もう誠と喋らない」
え、ええーーー!?なにその子供っぽいふて腐れ方!可愛いっ!
「………。じゃ…じゃあ、失礼ながら、今度からタメ口で…」
ごにょごにょと答える。
それに対して、春海はというと…
「ドーンと来なさいっ!新人ちゃんっ」
何キャラですか。っていうか誰ですか。新人ちゃんって何ですか。
突っ込みどころ満載だな、と無駄なところで実感する。
無意識にチラッと腕時計を見る。
時刻は、八時…四十分!?
これ完璧遅刻じゃん!三十分までに自分の席に着くように言われてるのに…。あー…もー、何やってんの私。
「ごめん春海!会社だから行くねっ」
バッと勢い良く立ち上がり、駆け出す。
「えっ、誠?」
後ろには手を伸ばす彼。
だけどその姿は、全力で走って振り返りもしない私には見えるはずがない。
私…あまりにも春海と話すのに夢中になってた。
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