特殊部隊としての存在

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「やはり……」 黒田がそう高くもない廃ビルの階段の踊り場でかがみこみ、塀に背を凭れて視線を流す。 「ビンゴか?」 天童もまた見ていた窓に背を向け、塀に身を隠すように屈んだ。 月もない曇り淀んだ夜。 離反した特殊暗殺部隊が、建ったばかりの巨大なビルに目をつけ探っていた。 「工事に使われたガラスだの壁だの鉄骨だの……そんじょそこらのビルを建てるソレじゃねえ」 天童がしゃかがみ込んだ膝に腕を垂らし、黒田とは別の方向に視線を流している。 二人を照らし出す僅かな明かりさえ1つない。 そんな中で、僅かにでも死界を作らぬように互い互い染み付いた条件反射で辺りを警戒する。 「……」 黒田も黙ったまま天童の言葉に、微かに漏らしたため息で返事をした。 「黒田……どうする? アレは戦車でも中々骨が折れるぜ? 勿論、そんなもん俺達は持ち合わせちゃねえがよぉ」 重苦しい空気の中で、更に低く重い重低音の声をポソリと出し肩を落とす天童が、思わず憂鬱げに視線を真下に項垂れる。 その様子を暗闇に慣れた目でみ、少し憂いた表情を一瞬する黒田。 「……」 無言の末に、元気付けるようにポンと天童の肩に手を置き、苦笑を浮かべた黒田。 「黒田……」 「悪いな……付き合って貰って」 黒田が優しい声で皮肉を放つと、僅かに勝ち気な笑みを口端に作ってみせた。 天童が憂鬱げに作っていた表情を和らげ、情けない笑みで答える。 「へっ……どおってことねぇよ」 「はは(笑)。助かるぜ、天童」 黒田は天童の苦笑にカラッと笑い、再び肩を叩いた。
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