特殊部隊としての存在

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立花 庚(たちばな かのえ)。 手先が器用で、あらゆる柔術体術を得意とする。 プライドが高く気高い。 歳は28で容姿は美しい。 軍人にしておくのは勿体無い程艶やかな男である。 単独で一般市民に紛れ、ビルの内に潜入しようと手を尽くしている。 南からは“余計に目立つだろう”と指をさされ、反対された役目だ。 ビルの清掃員やら中の小さなショップの店員にさえ中々なれない程にガードが固い。 一体この要塞と化したビルで何を行うつもりなのか、皆目検討もつかないのだ。 「? 南からか」 借りたアパートの鍵を回しながら携帯を取り出しメールを開く。 《スパイダーバタフライ》 蜘蛛と蝶。 特殊部隊の中で人質を表す単語として使用される。 蜘蛛が黒幕、蝶が一般人等を指すのだ。 「……」 ケイタイを握り締めた手の親指をふと唇にあて、不審な眼差しを作り部屋に入る。 目付きがキリッと研ぎ清まされた。 「……(おかしい、人を拐い監禁しているようには見えなかった)」 部屋のソファに浅く腰をかけ、膝に肘をたてると額に掌をつく。 携帯を見詰めながら更に険しい顔をしていた。
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