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近藤はうぅーんと唸るように考え込んだ。
すると隣に座っていた少年が声を発した。
「近藤さん、彼女をここにおいてあげることはできませんか?
彼女、帰る家もなさそうですし…」
近藤は少年の言葉に納得するように大きくうなずいた。
「そうだな。きっと周助先生も許してくださるだろう。
名はなんというんだい?」
彩未はどうにかここに置いてもらえることにほっとして溜め息をついた。
「彩未、山本彩未です。ありがとうございます。見ず知らずの私を置いてくださるなんて…ご迷惑じゃないですか?」
すると近藤は大きな口を開けて笑った。
「ずいぶんとしっかりとしているなぁ。迷惑とかじゃないから安心しなさい。礼なら君を助けてくれた宗次郎に言うんだな」
「宗次郎…?」
彩未は少年の方を向き首をかしげた。
それに答えるように少年はにっこりと微笑んだ。
「はい。沖田宗次郎といいます。これからよろしくお願いしますね」
彩未は慌てて両手を床について頭を下げた。
「助けていただいて本当にありがとうございました。これからよろしくお願いします」
―こうして彩未の試衛館での生活が始まったのだ。
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