第一章:夢の始まり

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(今日も見たな、あの夢) 彩未は服を着替えながらぼんやり考えていた。 彩未が自分の名前を呼ばれる夢を見るようになったのは、彼女が初めて人が命を引き取るのを看取った夜からだ。 しかしこの夢はうなされるようなものではなく、むしろ温かく包み込んでくれるような感覚であった。 だから彩未は尚更戸惑っていた。 着替えを終えた彩未は一階にある診療所に降りていった。 「あら、彩未。おはよう」 彩未の母、美代は朝ごはんを作っている手を止め振り返った。 「おはよう。お父さんは?」 「お父さんはもう朝の回診に行っちゃったわよ」 「うそっ、もう行っちゃったの?私が来るまで待っててっていつも言ってるのに……ちょっと行ってくるね」 彩未はそう言うと、急いで患者がいる病室へと向かっていった。 「おとーさん、ひどいなぁ、先に行っちゃうなんて!」 「あぁ、ごめんな。美代が作る朝ごはんの匂いがあまりにも旨そうだったから、早く食べたくなったもんでな」 白衣を羽織っている彩未の父、隆盛はいかにも物腰柔らかそうな顔つきだ。 診療所がいつも患者が溢れかえっているのは、きっと隆盛の人の良さも関係しているのだろう。 「別にそんなノロケ話聞いてないから。カルテ貸して、早く終わらせるよ」 「ははっ、最近ますます彩未は美代に性格が似てきたな」 その後二人は無事朝の回診を終え、美代が作る朝食を食べに向かった。
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