第一章:夢の始まり

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――朝食後 玄関にはいくつかの段ボール箱と、大人一人が入りそうなほど大きなトランクが置いてある。 隆盛はまだリビングにいる彩未を大声で呼んだ。 「おーい、彩未!このトランクを車まで運んでくれ」 隆盛が声をかけると彩未はリビングのドアからひょっこりと顔を覗かせた。 「わかったー」 そう返事をすると彩未は小走りで玄関までやって来た。 隆盛は箱をたくさん抱えており、大荷物だ。 「すごい荷物だね、これ全部が医療道具?」 「そうだ。今日行く患者さんがどのような容態かよく分かってなくてな」 「そうなんだ」 彩未と隆盛はやっとのことで荷物を車に入れ込み、出発した。 車に乗ると彩未はシートベルトをつけながら、運転をしている隆盛に話しかけた。 「お父さん、患者さんのお家までどのくらいかかるの?」 「山の方だからな、結構かかるだろうな」 「それじゃあ、また新撰組の話聞かせてよ」 「彩未は本当に新撰組が好きだな。父さんは倒幕派の方が好きなんだが」 「それは西郷さんとお父さんが同じ名前だからでしょ」 隆盛はとても幕末好きで、彩未が小さい頃からずっと話聞かせてきた。 おかげで彩未もすっかり幕末ファンであり中でも一番新撰組が好きで、その影響で剣道もやっているのだ。 隆盛は少し考え込むと、にっこり笑って楽しそうに話し始めた。 「そうだな…じゃあ今日は新撰組が活躍し始めるきっかけになった『池田屋事件』について話してやるよ……」
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