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「……外れた?」
凛は卯月の反撃を盾で受け止めながら、小首を傾げた。
正確には外れたのではなく躱されたのだが、凛が必殺の間合いが掴めていなかったのも一因だろう。
こうしている間にもじりじりと盾の耐久値が減らされている為、このまま接近戦を続ける事にメリットはないと判断した凛は強引に卯月の「ザク」を押し返すと、真っ二つになりかけている盾を捨てて飛び上がった。
フォアグリップを左手で握り、スコープを覗き込んで相手を十字線の中心に捉える。
(外さない……)
卯月のガンプラはまだよろけている為、コックピットを外れたとしてもダメージは与えられる。
凛は小さく息を吸い込むと、トリガーを引いた。
銃口から吐き出された桃色の閃光は、真っ直ぐに「ザク」のコックピットを撃ち抜く。
凛の勝利だ。
『勝ったのは渋谷凛ちゃんです!お二人の健闘を称えて、拍手を!』
司会のハイテンションな叫び声と共に、それに負けない程大きな喝采と拍手が巻き起こる。
それは濁流の如く会場を飲み込み、溢れ返らんばかりの熱気を呼び込んだ。
Gポッドを降りた凛は観客達に笑顔で手を振りつつ、ステージの真ん中に向かう。
「おめでとう、凛ちゃん」
反対側のGポッドから降りてきた卯月が、笑顔で凛の健闘を讃える。
「ありがとう、卯月。避けられると思ってなかったし、卯月も凄かった」
「えへへ、次は……えっと、次があったらだけど、負けないよ!」
凛は卯月の言葉を受け、己の中で冷えきっていた何がが再び燃え上がるのを感じた。
「……うん、いつでも待ってるよ」
二人は互いに健闘を称え合い、握手を交わす。
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