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その週の土曜日。
私は一之瀬というナンパ男に言われたことを考えていた。
アーティストの素行管理。
サクラ。
O-NEXTにゲストで入れる。
・・・・。
うーん・・・・。
面白そうだと込み上げてくる好奇心と、誰も知らない職業に対する不安の板ばさみになっていた。
「あーいた!蘭~!」
美咲と陽子が駆け寄ってくる。
いつ見ても本当に綺麗で可愛い二人組。
こんな子たちがどうして自分と仲良くしてくれているのか未だにわからないが、入学当初からの付き合いだ。
「ちょっと、蘭!この間の一之瀬とかいう男、雑誌に載ってるんだけど!」
興奮気味に陽子が差し出してきた雑誌はティーンに人気の写真が売りの音楽専門誌で、音楽好きなら一度は購入したことのある有名誌だった。
そこにでかでかと『これからはライブの時代!ファンもステージの一部だ!』との見出しで『O-NEXTブッキングマネージャー一之瀬正彦』としてインタビューと写真が載っていた。
「あの人、O-NEXTのブッキングマネージャーって本当だったんだ・・。」
「ちょっと!コレ見て!今日のO-NEXTのライブ、『シルビアンボンバー』ワンマンだよ!!!!」
いつの間にかスマホで調べ物をしていた陽子が大きい瞳をさらに大きく見開き、腕が取れるんじゃないかと心配になる程の勢いで今日のO-NEXTライブの画面を私に見せてきた。
シルビアンボンバーとは、バンドでありながら演奏をせず、ステージ上で過激なパフォーマンスを行う新型バンドで、今、飛ぶ鳥を落とす勢いで老若男女問わず人気急上昇中。チケットは常にSOUL’D OUT。入手倍率は常に10倍を超えるというアイドル顔負けの大人気バンドだ。
「ってことは・・・私たち、シルビアンボンバーが見れるって事?!」
普段クールな美咲までもが顔を上気させ、背景に薔薇を背負っている。
そういえばこのチケット、美咲に懇願されて、私と陽子を筆頭に、クラスの女子約半数を総動員して、先先行、先行、一般と、電話とWebを駆使して頑張ったけれど、結局全て落選してしまった『No!銀爆ピック!~愛の清汗リレー~』ツアーファイナルのチケットではないか。
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