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「ちょっと!待ってってば!」 ぐい、と引き寄せられた腕。 勢いに負けて崩れ落ちるアイス。 ピンク 白 水色 ナンパ男の手の先は・・・・・・・・・・ ・・・私だった。 「お嬢さん、僕、こういう者なんだけれど・・。決して怪しい者じゃあない。5分だけでいいから話を聞いてくれませんか。」 真夏の昼下がりに黒のスーツを着込んで髪はプリンのオールバック。今時まれに見るセカンドバッグを提げている。 一昔前に見た金融映画の悪役に居そうなタイプだ。 「なんですか?見るからに怪しいんですけど?!」 「申し訳ありませんが、この子、もう事務所に所属しているので、お引取り願います。」 陽子と美咲が私の前に立ち、ナンパ男を振り払おうとしてくれた。 「いやいや、本当に、怪しい者じゃあないんですよ。芸能プロダクションのスカウトでもない。ほら、この名刺、ちゃんと見て。」 差し出された名刺にはこう書かれていた。 有限会社 オンリー・ユー 代表取締役社長  一之瀬正彦 業務内容:タレント・俳優・アーティストの素行調査及び素行管理        イベント企画・ライブハウスO-NEXTブッキングマネージャー 「はぁ?タレントの素行管理ぃ?!なにそれ?!」 「ライブハウスO-NEXT・・・。」 「・・・・・。」 O-NEXTはキャパ2000のライブハウス兼ショーホールで、渋谷のど真ん中にあり、アーティストにはメジャーへの登竜門のライブハウスとして、モデルには毎年行われるカリスマイベントTOKYO KAWAII GIRLS COLLECTIONの会場として知らないものは居ない超有名な箱だ。モデルをしている美咲も例に漏れず、一度は立ちたい憧れの場所なのだ。 思い思いの言葉で疑惑の目を投げかける私たちを尻目に一之瀬は話し始めた。
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