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「許さない」
背後から聞こえる刺すような冷たい声にびくっとなる。
椿。
凄まじい形相で私を睨み付け、その両の目からは血の涙が流れる。
「許さない許さない許さない!! お母さん!! 椿の方を見てよ!! お父さん!! 椿からお母さんを取らないでよ!!」
お父さん? お母さん? この子は何を言っているの?
「どうしてお父さんもお母さんも椿の側に居てくれないの? 椿を迎えに来てくれないの? 何で、椿にはお父さんとお母さんが居ないのぉぉ!!」
絶望的な哀しみを伴った慟哭。
「違った……。あなたたちも椿のお父さんとお母さんじゃなかった……。お父さん……お母さん……いつになったら、来てくれるの?」
ひくひくとしゃくりあげながら、椿が血の涙を流し、こちらを見た。
「いらない……。お父さんとお母さんじゃないなら……あんたたちなんていらない!!」
いつの間にか、椿の手に握られている包丁。
「うぁぁぁぁ!!」
椿が絶叫しながら、悠太に包丁を振りかざした。
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