家族が欲しかった……

5/10
前へ
/10ページ
次へ
―――――― お父さん……。お母さん……。 包丁を握り、息たえたお母さんの体を見ながら、あたしは呟いた。 止めどなく溢れる涙を手の甲で拭い、血にまみれた二人の亡骸をじっと見つめる。 どうして……どうして、お父さんもお母さんも椿を迎えに来てくれないんだろう……。今度こそ、お父さんとお母さんだと思ったのに。 つけっぱなしのテレビから、バカ騒ぎが垂れ流されている。 『最強は誰だ』 そんなことを司会者が言って、お笑い芸人たちが体を使って何かをしている。 下らない。鬱陶しい。 消したいけど、リモコンが見つからない。 それより、とても眠い。 二人の亡骸を踏み跨ぎ、あたしはソファーの方へとゆっくり歩いて行った。 ソファーに腰掛け、ごろんと横になる。 今……何時ぐらいなんだろう? 外が暗いから……夜になっているのだけわかるけど。 ソファーで横になると、睡魔が襲ってきた。うつらうつらとしていると、いろんなことが頭の中を駆け巡って行った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加