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家族が欲しかった……
ボキリと折れた雛人形の首。
げたげたと笑い狂う雛人形と一緒に椿が楽しそうに歌う。
「あぁかぁぁりぃぃうぉぉつけましょ ぼんぼりにぃぃ ぅおはなぅをあげむぁしょ むぉむぉのはなぁ~」
間延びした、調子外れの低い声。
目を弓なりにさせ、口を裂けさせ、楽しそうに歌いながら、次々に雛人形の首を折っていく。
ボキリボキリボキリ!!
「ぐぉぉにんばやぁぁしぃのぉ ふえたいこぉぉ きょぉぉはたのしい ひなまつりぃぃ!!」
げたげたげたげたけたけたけたけたGETAGETAけたけたGETAGETA。
部屋中に響く、椿の歌と雛人形たちの笑い声。
怖くて怖くて、動くことができない。
泣くこともできない。
ただ、椿と雛人形を見ていることしかできない。
その時だった。
「美春!!」
耳元で聞こえた、力強い男の声。
悠太!!
雛人形の笑い声と椿の歌が止む。
「美春!! しっかりしろ!! お前が見ているものは幻だ!!」
「ゆ……た……」
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