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「入れよ」
案の定、家に帰っても、誰もいやしなかった。
父は城でずっと医者の仕事をしているのだ。
国王は勿論、王妃、王族、臣下、他様々な人を見ている。
だから、帰るなんて出来やしない。
自分で言うのも何だが、俺は手のかからない子らしい。
料理も一応生きていける範囲、食うに困らない程度にできる。
医療の知識も、家に十分すぎるほどに本があるし、
研究材料も全て整っているから問題はない。
今の状況は、むしろ好都合だ。
スンスンとやはり鼻を鳴らして、家の中をそわそわと歩き回る
アルフレドに、いつぶりかと他者に思われるだろうが、
思わず笑みが浮かんでいたようだ。
「せるじゅ!ここ、せるじゅのにおいがする」
「そりゃあ、俺の家だからな」
「ん。せるじゅの匂い。おれ、好きだ!」
「・・・変わってるな」
こうして、誰かとまともに会話をするのも、久しぶりだ。
そうだ、まず服をどうにかしてやらないといけない。
いつまでもぼろ布を着せているのも、あれだ。
クローゼットの場所を教えて、色々と見せてやる。
「好きなの、選んで着ろ」
「にんげんの、けがわか?」
「あー、そんなもんだ。ついでに服っていって、お前が今来てる布よりましだろう」
「ん。せるじゅの、服!」
何がそんなに嬉しいんだか、だが、悪くはない。
そう、思えた。
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