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ヨレヨレスーツの白髪混じりが吐き出したモノは〈その他の部類〉である。
見える者にしか見えないし、写真にも写らないモノだ。
長いあいだ、人はそれを信じて疑ってきた。
けれども、大概のヒトはそれを腹の中で飼っている。
大きいか小さいか、強いか弱いかは人それぞれで、嫌なモノだから誰にも言えないし、かと言って邪険にもできないから、なんだかお腹にしまっている。
「アンタ、大丈夫か?」
玉虫はダウンジャケットを脱ぎ、それを丸めて枕を作った。
枕を男の頭の下に入れたが、ドロドロはなおもこの世界に滲み出してくる。
「ああ ああ‥‥」
男は目を閉じたまま、鳥の雛が親鳥に食べ物をせがむような声を出した。
ドロドロの嫌なモノが、ヨレヨレの口から出尽くした。
だから玉虫は右手を動かしたのだか、その動きを止めたものがある。
《その部類は拙者の餌ゆえ》
「‥‥誰‥だ‥‥」
玉虫の小さな耳に、押し入ってくる声がある。
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