七尾玉虫

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  玉虫は茶封筒を梅松ミチ代さんへぶっきらぼうに返すと、口をへの字に曲げたままレジ中へ入り、普段はあまり使わない1番レジを開けて、その女性をまねいた。 ミチ代さんのカゴの中の商品は、小さな子供が喜びそうな物ばかり。 「‥‥‥」 玉虫が1番最初にスキャンしたのは、オモチャ付きのキャラメルである。 そのあとは、ガムやチョコレートやクッキー。 「全部で1280えん‥」 ミチ代さんは布の財布を取り出し、レジのカウンターへ丁寧に小銭を並べだした。 100円玉が10枚、50円玉が4枚、順に並べた。 「ミチ代さん」 「何だい?」 「さっきの住所は、俺がしっている‥‥」 1レジの横、2レジを打っている、玉虫のクラスメイト架輪が笑った。 「‥‥‥」 だから玉虫の口は、先程より更に、への字に曲がった。  
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