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ヒャッ ヒャッ ヒェー
「‥‥‥」
玉虫が売り場に戻ると、灰色の皺くちゃなスーツを着た白髪まじりのサラリーマンが、雑誌コーナーで奇声をあげている。
「ねぇねぇ玉虫くん、文芸雑誌って笑えるの?」
カウンターから身を乗り出して、架輪が大きな目をぱちくりさせている。
「はいはい高校生の2人、仕事中に無駄話はしないの!」
店長の鏑矢は、玉虫ほどではないにせよ愛想の良い男ではない。
「はーい店長、すみませんです」
「ヒャッヒャッ」
皺くちゃのスーツは、架輪の前に文芸雑誌2冊を置いた。
「七尾くん、そろそろ休憩にしてください」
「‥‥」
商品発注機を操作したままの鏑矢である。
玉虫は仏頂面のままレジ中へ入り、名札の裏の休憩用のバーコードをレジに読み込ませた。
「アンタが行けはいいんだ‥‥」
玉虫は鏑矢をにらんだ。
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