《Ⅰ》天使を拾った日

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台風が見事に県を直撃した、9月のとある日の初夜。 間近に迫る文化祭の準備を切り上げ慌てて家路についた彼だったが、入浴から夕食まで済ませた後になって、ふと弁当箱を学校に置き忘れたことに気がついた。 大したことじゃないと思うかもしれないが、彼にとっては一大事だ。 ボロアパートにて切り詰めながらのギリギリのシングルライフを送る男子高校生にとって、たった1つきりの弁当箱を忘れたことは、すなわち翌日の昼飯が作れないということであり、胃酸が逆流しそうな辛さに耐えながら授業を受けねばらない事態に直結する。
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