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所で何故、糸紡ぎ機だったのか。
いくつか説はあるが。
糸紡ぎはこの当時、女性の家事だったそうだ。
糸紡ぎ機を知らない姫はかなりの箱入り娘で国ぐるみで甘やかされ、溺愛されていたと言うことのようだ。
呪いをかけられたのには、王にも原因があった訳で後ろめたさもあっただろうが。
今も昔も高齢になってから生まれた子供はついつい甘やかしてしまうと言うのも人の性だろう。
魔法使い組合側からしたら、これは良い傾向ではない。
なにせ、姫はB教のシンボル的存在なのだ。
いつA教の牙城を崩すとも解らない。
それでも国内から糸紡ぎ機を無くした事で王が国民から信用を失ったであろう事も事実。
糸紡ぎ機が無くても、糸紡ぎはしなくて良い訳ではないのだ。
とりあえずは、姫への呪いが確実にかかれば十分ではある。
しかし、呪いで宣言した肝心の糸紡ぎ機も城の奥に一台あるっきり。
この一台は、恐らくは文明を衰退させないため資料としての保存した物である。
実働すれば嫌でも姫の目に触れる危険性がある為、実際に使っていたと言うわけではないだろう。
魔法使い組合側はもう一手打って、無理にでも姫に糸紡ぎ機を触れさせる為に城に潜り込みついには呪いを成功させるのである。
しかし、ここで欲をかいてしまったのが魔法使い組合の失敗である。
姫が眠りにつく呪いは姫だけにとどまらず、城中に広まってしまう。
結果的には茨が繁殖し、誰も入れない。入っても命を落としてしまう事まで起きる。
この茨は、呪いの効果でなく自然現象であるのは重要なので覚えておいてもらいたい。
これは、百年間内政を魔法使い組合で取り仕切りA教の地盤を盤石なものにしようと目論んだとも思える。
姫が目覚めた時にはもはやシンボルがどうとか話にならないくらいに。
魔法使い組合の目論見通りに事が進んだかと言えばそうではない。
元はと言えば王の不徳が招いた事とはいえ、魔法使い組合も無関係ではないのだ。
15年もの月日。国民の愛を受けて育った姫である。
何の罪もない姫を手に掛けたとあっては、よもや呪いを阻止できなかったとなれば魔法使い組合の信用もまた失われるのだ。
もう一つ考慮すべき事があるとすれば、王にB教を薦めた者が国内にいる可能性があると言う事だ。
どちらにせよ、この行動によって魔法使い組合側はむしろ崖っぷちに追い込まれたのだ。
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