真相

16/16
161人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
父が出迎えてくれた。 「おかえり。また事件に巻き込まれたそうだな。でも無事で何よりだ」 「俺のキッタ、ハッタの大活躍で、無事解決したよ」 大活躍と言う割には、イズミは浮かない顔をしている。 「ヒロさんと何かあったのか?」 「別に」 二日間も一緒にいて、絆が深まるどころか、溝が出来たなんて、恥ずかしくて言えない。 「留守の間に湯浅月子さんという人から連絡があったぞ。お前の卒業後の進路の事など訊かれた。嘘は言えないから正直に言ったら、是非娘とデートしてくれと頼まれた」 湯浅月子はイズミに遺産をくれた及川佳純さんの親戚だ。イズミは以前月子に受験が終わったら、娘の歌穂とのデートを考えると言ったままだった。(遺産相続殺人事件の章 参照) 「父さん、あの親子からは結婚を迫られている。だから連絡があったらその話は断わって」 イズミが階段を上がると、タイセイが部屋から顔を出した。 「元気ないけれど、ヒロさんと喧嘩した?もう別れた?」 「まだ別れていない」 余計な事を訊いてくるタイセイにムッとして言い捨てると、自分の部屋に入った。 すぐにゴロリとベッドに寝転がった。 『疲れたな』 怒涛の三日間だった。 目を閉じるとヒロの体や白い首、色々な表情が脳裏に浮かび上がった。 とても切なかった。 終わり。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!