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「事件調査?」
イズミは愛知セリのことといい、あのお父さんに事件調査の依頼が度々(たびたび)ある事を、不思議に思った。
(女教師殺人事件の章 参照)
実は有名な探偵なのだろうか。
「それでお父さんも一緒か」
「ところが父には別の仕事があって、一緒には行けないんです」
イズミは内心ガッツポーズをした。
「どの位遅れてくるの?」
下心が読まれないように、気を付けて顔を作った。
でもヒロからみれば、目が笑っているので、イズミの本音はばれている。
「一日」
一日だけでもOKだ。
イズミは俄然旅行が楽しみになった。
「ヒロが行って、依頼人はこんな小さな女の子が来たら、怒るんじゃない?」
「“小さな”は余計です。依頼人には事前調査だと言ってあるので、問題はないです。後で本人が来るんだし」
「それで俺が一緒に行くのは、なんで?」
「我々は警察ではないので、正面切って事件の捜査ですと、ペンションに乗り込むわけにはいきません。他のお客を怖がらせたり、変な噂を立てられたりしたらまずい。一人の泊まり客じゃ怪しまれるからイズミを誘いました。協力してもらえませんか?」
「そうかあ。なるほどわかった。喜んで協力するよ」
イズミは一日でもヒロと一緒にいられるなんて楽しみだなあと、どうしても顔がにやける。
「ちなみに部屋は別ですから」
ヒロは浮かれているイズミに釘を刺した。
「そうだよね」
口では当然のように言った。
でも心の中では、『残念。でもまあいいか。どちらかの部屋にいけばいいんだし』と考えた。
下心満載だ。
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