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扶桑皇国横須賀第四女子中学校敷居内の崖で1人の少女が木から降りられなくなった子猫を助けようとしていた。
「芳佳ちゃん危ないよ!?」
芳佳と呼ばれた少女のはとこであり、親友でもある山川美千子と同じ中学校の生徒が、心配そうに芳佳を見守っていた。
「大丈夫!!」
芳佳は少し震え気味に答える。
「うわっととと…」
少し落ちそうになり体勢を整えてまた助けようとしている
「宮藤さん!!危ないから戻って来なさい!!」
女子中学校の教師だろうか。教師と思われる女性が芳佳に戻るように叫ぶが、芳佳の耳には入らず、子猫を助けることに意識を集中させている。
「もうちょっとだから…絶対助けるから!!」
「芳佳ちゃん…」
美千子には芳佳を見守って無事を祈ることしか出来なかった。
なんとか子猫にたどり着いた芳佳。
「ほら、もう大丈夫だよ。」
と、子猫を抱えて安心させる芳佳だが、芳佳と子猫を支えている木がメキメキと音をたてて曲がっていた。
「へ?」
バキバキバキ!!
「「「「芳佳ちゃん!!」」」」
「きゃああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?」
子猫を庇うようにして抱えた芳佳はまっ逆さまに落ちていく。この高さから地面に叩きつけられたら死んでしまうだろう。
死の恐怖を感じてしまった芳佳だが、地面に叩きつけられはしなかった。誰かに空中で抱き抱えられ、死の恐怖は消え去り、安心と疑問が頭に入った。
「あれ・・・・・・・・・・?」
芳佳を抱えているのは、黒い翼を生やした、白髪で碧眼、全体的に髪が少し長く左目が前髪が隠れていて、裾が脹ら脛近いある少し黒に近い深緑のレディースのコートを羽織っている少年である。
「・・・・・・・・・」
少年は無言のまま、芳佳を優しく降ろす。
「あの・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・芳佳・・・・・」
「え・・・・・?」
少年はそう呟いた後、翼で羽ばたいた勢いを利用して崖の上まで翔んで姿を消した。
芳佳達は少年が翔び去った方向をただ眺めていた。
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