夜空を見上げる

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 僕は今、再びゆっくりと夜空を見上げる。  夜空は、  宇宙は。  幾千光年の距離と那由他の時を越え、ただそこに在り続けることだけが当然の真理であるように、悠然と世界を覆いつくし広がっていた。  そうして僕は気付いた。  こんなに広く、こんなにも美しく、全てを包み込むように穏やかで、あらゆるしがらみから解放されたように自由。何物にも染まらない確固たる存在感を持って、そこに在る、宇宙に手を伸ばして気付いた。  僕の夢は消えていない。  随分と長い間、心の奥の狭苦しいところで燻っていたようだけど、火が完全に途絶えてしまっていたわけではなかったのだ。  今、僕が夜空を見上げた。  改めて知った宇宙の輝きに僕は目を奪われる。  心の奥で夢の火に新しい燃料がくべられる。  燃え移った火はたちまちに大きさを増して、これまでにないくらい煌々と光を放つ。  僕は夢を失っていなかった。ただ、少し忘れていただけのこと。  少年は誰だって、心に夢を抱えて生きている。  やり直そう。何年かかるか分からないけど、僕は宇宙飛行士になるんだ。もう二度と、この夢を忘れたりはしない。  僕はもう一度、頭上に広がる無限の宇宙を眺めた。
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