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どうして?
ぼくの前には死体が二つ。男と女が一つずつ。
溢れ出した血液が部屋のカーペットを嫌な色に染め上げている。ぐちゃり、と足元で粘着質な液体の音が聞こえた。音の出所に目を向けると、それはぼくが血溜まりに足を踏み入れたことによる音だと分かった。白かったはずのスニーカーが見る見る赤色に変わっていく。
異常を察してか、何人かの友人が階段を昇ってくる音が聞こえた。
どうしよう。
死体のある部屋はコテージ二階の一番奥に位置しており、廊下に迂回ルートなど無い以上、どのように行っても必ず下からやってくる連中とは鉢合わせすることになる。逃走は不可能だ。だとすれば、ぼくに取れる手段はたった一つしか残らない。
ぼくは手近なところにあった椅子を掴むと、勢いをつけて窓目掛けて放り投げた。
目論見どおり、椅子は窓に激突すると甲高い音を立てて窓を破り、そのまま階下へと落ちていった。次にぼくは死体から溢れた血の海に飛び込む。生理的な嫌悪感が全身の皮膚を粟立たせる。こみ上げてくる胃液を抑えながら、必死で二つの死体を介抱している様子を装う。それとほぼ時を同じくして友人達が殺人現場に到着した。
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