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「田口ッ! 大丈夫か、それにさっきの音……は……」
仲間内のまとめ役であると自他共に認める男、石田健吾は部屋の惨状を見て言葉を失う。
次いでやってきた山崎は死体を見るやいなや吐き気を催したらしく、引き返そうとしたようだったが、堪えられず廊下で盛大に吐瀉する。最後にやってきた小橋に至っては二人の尋常ならざる様子を目にして怖気づき、部屋に辿り着くことすら叶わなかった。
「こ……これは……一体、どういう……こと……だ!?」
極度の緊張で乾ききった喉を酷使して、息も絶え絶えになりながらも石田はなんとかそれだけの言葉を言い切った。ぼくはそれに対して、あらかじめ用意していた答えを返す。
「ぼ、ぼくにも分からない。音が気になって……来てみたら二人が倒れてたんだ。犯人は窓から逃げたんだと思う。ほら……窓が割れてるだろ」
「そうか……確かに俺も窓が割れる音を聞いた。だが……いや、今は救急車……電話、早く外に連絡を……」
「わ、分かった。ぼくが行ってくる」
そう言ってぼくは部屋を後にする。
血に染まったスニーカーは歩くたび、白い廊下に赤い足跡をつけていく。ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと音を立てて。お前は逃げられないぞと笑うように。
ふざけるな。
ジャケットの懐から血に濡れたバールが覗いた。
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