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一階のロビーに戻ると、上の騒ぎの様子を遠くから伺っていたらしい女性陣と鉢合わせした。残っている女性二人のうち、小柄な方――西野が血塗れのぼくを見て悲鳴を上げた。この様子だと二階には行かせられないな、と思う。なにしろそこではついさっきまで生きて喋っていたはずの友人が血達磨の肉塊と化しているのだから。
「ねえ、何があったの?」
比較的冷静だったもう一人、木下が訊く。ぼくはなるべくショッキングにならないよう、言葉を選んで伝えた。
「松山と玉田が誰かに刺されたみたいだ。とにかく……通報しないと」
ぼくは机の上に置きっぱなしになっていた自分の携帯電話を手に取る。かろうじて圏外ではないようだが、場所は山奥だ。通報が半ば絶望的な結果に終わるであろう事は薄々感じながらもぼくはまず119番に電話を掛けた。
「はい……はい……そうです。人が刺されて……はい、すぐにでも。……いや、残念ながら息はもう……ですけどッ! …………そうですか、お願いします」
電話を切る。次は110番へ。
「はい。警察ですか……人が刺されて、二人……はい……おそらくはもう……はい。可能な限り早く……二時間……そんな……!」
電話を切る。
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