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ものすごいスピードで後ろに飛ばされながら、また逢おうなと銀竜に手を振る。
銀竜は俺が吹っ飛ぶのが予想外だったのか、腕を前につきだした状態で固まっていた。
多分あれは抱きしめるために出した腕なんだろうなあ…
ひ弱な人間ですまんのう。
いつか再会出来ると良いんだけど、っていうかそもそも銀竜は読心術でも使ったのか?
そうじゃなきゃ俺がこれから旅をするってのはわからない筈なんだが…まあ、いい。
今はそれどころじゃあない。
森から離れてしまうということはシーラや三弥先生と合流出来る可能性が低くなるということで、つまりは大変ヤバい状況に陥っても誰にも助けを求められないわけだ。
…まあ、歩くチートみたいな俺なら助けを待たずともどうにか出来るんだとは思うが。
いかんせん、心細い。
やっぱり人はひとりじゃ生きられねーなというのを変なところで再確認させられる。
椎「このまま飛ばされてればどっかの街にでも着きますかね…」
さっき突然体が急降下を始めたので、急いで現実から目を背け、チートな俺ならいける!なるようになれ!!!と目を瞑った瞬間。
――ヒウッ…ガッザザザ…ッ
椎「おっぐ…うわあああいたいよー」
俺はどこかの地面に叩きつけられて、棒読みなセリフを吐きながら砂の上をごろんごろん転がり、体の回転が止まると同時に意識を手放した。
そして今まで俺の背中に出ていた大きな翼も消えた。
…本当は気合いで起き上がれるものの、なんかこれから先にかかわる重要なフラグが立った気がしたからあえて寝たってのはオフレコで。
◆◆◆
それから数十分後。
「――なんだぁ、こんなとこで行き倒れか?…おい坊主、大丈夫か?」
意識を失って(正しくは寝たふりをして)路上に寝転がる俺の頭上から、シンプルな服装の真っ赤な髪をざんばらにカットした男が顔を覗かせた。
「……はあ、こいつもか…」
数分くらい俺の顔の横に膝をついて頬をピシャリピシャリと叩くが、俺が目を覚ます様子はないなとわかったのか、その体を持ち上げて肩に担ぎ、どこかを目指して歩き出したのだった。
俺を担ぐこの彼に、アベニズムなるものがありませんようにと半ば真剣に祈り、今度は本気で意識を手放した。
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