いちにちめ。

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バチンッ 夕暮れの赤に染まる教室の中を、乾いた音が満たす。 何度も何度も音は鳴り響き、男は己の手のひらを朱に染めて呻いた。 「……っど お し て ッ !あーんな簡単な問題が解けないんだ蓮見椎名あぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」 頭を抱えてブリッジする勢いの担任教師。本当に苦労をお掛けしているな、とは常々思ってはいるわけだが。 椎「そんなこと言われてもね。わかんないもんはわかんないし」 中学からそうだが、やはり数学に英字が介入してくるのはおかしいと思う。 理系に染まりたい文系の気持ちはわかるが、こればかりは見逃せず、結果… 「お前がわかろうとしていないだけだろうがっ!!ちゃんと授業受けて予習復習をしてからの各教科担当の先生方に質問等をすれば、通常はケアレスミス程度で済むはずなのにそれがどうだ?お前は1+1の問題にすら『☆』を書く始末…!!!勉強に対しての学習意欲が全く持って無さすぎる!!この軟弱者ッ!そこまで勉強が嫌か!?」 椎「嫌です」 「な……!!っ…!こっこのクソガキ…!」 すべてのやる気が身体中から放散してしまって、戻って来なくなってしまった。 今回の担任は、そんな俺相手にもずいぶんと良くしてくれているが、ひたむきすぎてちょっと申し訳ない気もする。 現に今、はっきりと物を言った俺に悪態を吐きながらも、次はどうしようどうすればやる気を引き出せるか等独りごちっている。 椎「ごめんねえみっちゃん。俺は何を持って来られようが勉強だけはする気ないから」 この前教科書を読もうと机に向かっていただけで、原因不明の動悸・息切れ・目眩・発熱・嘔吐感などもろもろの症状が襲ってきたことは、一生涯忘れようもないだろう。 みっちゃんと呼ばれた担任こと三弥先生は、俺をじと目で見つめて、深い溜め息を溢した。  
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