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椎「何もしてないよー赤眼鏡先生」
三「そりゃ残念だな、黒眼鏡くん」
あの短時間で校長に色々押し付けてきたとは恐れ入る…あなおそろしや。
黒塗りの車の中から笑っている三弥先生の顔面に鞄を投げつけ、すっごくファンシーなぬいぐるみ達が占領する後部座席にお邪魔した。
俺はわりとこのぬいぐるみでぎゅうぎゅうな感じが好きなだけであって、けしてファンシーなぬいぐるみそのものが好きなわけではない。
勘違いダメ、絶対。
適当にぬいぐるみ達をかき分けスペースを開けると、そこに座って背もたれに背を預けた。だらけきった感じで。
先生はそんな俺を見るとゆっくりと車を発進させ、校門から慎重に出ていく。
椎「…せんせー。お菓子かご飯かカップ&ソーサーあるー?」
三「後半ふたつは無いな、残念ながら」
椎「んじゃお菓子は?」
三「お前の後ろ」
車が規定スピードで走っている中、そう返されて俺は後ろをゆっくりと振り向いた。ばかめ、俺の後ろは背もt……なん…だと…?
椎「なあ先生」
三「ん?」
椎「標準スピードとはいえ、走行中の車に着いてこれる歩行者って居たっけ」
歩いてるはずなのにぴったり後ろにくっついてる人間ってヤバくないか。
むしろこれ人間?
先生の言葉をなぜか鼻で笑いながら振り向くと、真っ赤なローブを身に纏った無表情の黒髪ツインテの女の子が俺を見ていた。そして目が合う。女の子と。そりゃもうバッッッチリと。
その瞬間少女はニヤッと笑い、先生はすっとんきょうな声をあげた。
三「ばっ馬鹿お前、いくら勉強してないからってそんなのもわからなくなってるなんておま…」
いやちゃんとわかってるから。
車くらいしか追い付けないのわかってるから。あとバイクとか、下手すりゃ自転車とかくらいだろ?
そう言いたくても言えない。
なぜなら「俺」が「少女」に「口を押さえられている」から。
少女はガラスを割ることも無く、まるでそこに障害物などないみたいに手を伸ばして俺の口に手を当てたんだ。
空いている片方の手で、しーっとジェスチャーをしながらウインクを投げる幼…少女。
ごめん、君ウインクへったくそだよ。
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