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それでこういうんだ。
世界を救ってと―――
「蓮見さま、どうかこちらの世界を滅ぼしていただけませんか!?」
言わなかったな。全く逆だった。
救うどころか滅ぼせって言われた。
なになに。
俺、まさかの魔王ルートなんですか?
ひとり呆然としている中、少女は俺の手を取って、両手でガッチリ握ってくる。
鼻息は荒いし、やたら眼はキラキラしているし、……つまりすごく期待されている。俺がYesと答えるのを。
椎「えっと…まず、あんたがどちら様かを聞きたいんだけど」
少しでも話を逸らすべくそう言ってはみたが、少女はまた口角を上げて首を横に振った。
「まことに残念ではありますが、私はまだその問いには答えられません。
そういうわけで、よろしければそちらのオジサ…お兄さんとご一緒に、私の世界に来てくださいますか」
椎「何がそういうわけかは知らないけど、名も知らない相手と知らない世界に行きたくは無いな。てか俺超凡人だし…」
「何をおっしゃいますか、だからこそ使いやすげふんごふん。
…さて、お話も整いましたところで、早速私共の世界へご案内致します!」
なんか危ない発言を隠すように、焦りぎみに狭い車内ですっくと立ち上がった少女は、懐から取り出した小さな杖を振るう。
そうして彼女が何か一言呟くと、車の天井に光輝く紫色の穴が開いた。
…開いた、よりは現れたが正しいのか?
とにかくその穴はわずかに吸引を行っているようで、周りにあった小さな縫いぐるみから順に吸い込んで行く。
それってわずかどころじゃなくね?というツッコミは要らないかんな。
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