第1章:上 二周目

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 俺が訓練所と読んでいるアスガルド戦闘シミュレーション施設は支部長室があったフロアよりは一つ上、地下二階の隅に広いスペースをとって作ってあった。  学校の体育館五、六個分に匹敵するであろう空間に様々な戦闘シチュエーションを想定した施設が並んでいる。その中でも俺はもっともオーソドックスな部屋を選んだ。 「いやー、こうやって迷いなく歩いていくのを見るとホントにキミが元アスガルド局員だってことが分かるね」  俺の後ろからついてきていた日比谷がそんなことを言う。ちなみにコイツは訓練所がどこにあるか知らなかった。とんだ支部長サマである。  誰もいないのを確認すると、俺は先んじて装備課で借りてきていた木刀を肩に担ぎ直す。 「ちょっと離れてろよ、危ないから」 「そんなことは百も承知さー。怖いから部屋にも入らなくていい?」  それは駄目だろ。  嫌がる日比谷を何とか室内に押し込んで、俺は能力の解放に入る。  目線の先にはターゲットとして用意したカカシ。カカシといっても金属製の頑丈なヤツだ。確か電撃系の異能使いが的に使っていた記憶がある。  カカシを睨み、精神を集中させる。  一撃必殺のイメージ。  木刀を振り上げた状態で構えていると、不意に全体を淡い燐光が包んだ。青く煌くそれこそ俺の異能。  不可能を可能にする力の体現。 「斬ッ!!」  左上から右下へ振り下ろした木刀の軌跡が青く残る。次の瞬間には耳障りな音を立てて金属製のカカシの上半分が床に落ちた。 「おおぅ……」  背後で日比谷が目を丸くしているのが見えるようだった。  俺は振り返って言う。 「これが俺の異能。《世断刀》だ」  この能力の欠点は剣かそれに準ずるものがないと全く役に立たないこと。斬る以外のことは出来ないこと。  だが、こと斬撃に関していえばこれを越える能力に未だ俺はであったことがない。破壊力ではトップクラスの異能だろう。  この先もまだあるのだが、今は良いだろう。  驚きすぎて腰を抜かした日比谷を担いで、俺は訓練所を後にした。
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