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四月。
いろいろあって非日常の世界に足を踏み入れることになった俺こと黒川悠。
初めは慣れないことばかりで失敗の連続だったが、半年もすれば大体の要領を掴んでくるものだ。
当時は自分の身を守るだけでいっぱいいっぱいだった俺も、今では仲間を守りながら最前線で敵と戦う日々だった。
「レン! バックアップ頼む。宮鳥と二見さんは俺に続いて! このまま一気にこの建物を占拠する!」
俺は日比谷支部長からの指令でとある廃ビル街に赴いていた。最近その辺りで不審火が頻発しているという通報を受けてのものだった。発生する火の特徴などから異能力者の仕業と断定。捕獲、あるいは殲滅を目的として俺を暫定リーダーとした第三小隊は動いている。
「オーケイ、視界クリア。進んでいいよぉ!」
広域探索能力を持つ能力者、雪城レンの言葉を待って、俺は廃ビルの階段に足を掛ける。何が起こってもおかしくない。それは覚悟していた。全員が全員、超常の力を振るう能力者の戦いというのはそういうものだ。そこで求められるのは冷静な判断力と、何が起こっても動じない精神力だ。
俺は深呼吸をし、タイミングを窺う。
「………………よし、行くぞ」
背後で宮鳥紗枝と二見湊が頷く。俺は意を決して突入を試みた。
階段を駆け上がり、フロアを一気に制圧する。この場に潜んでいるはずの火炎系能力者の正確な能力は不明だが、所詮は一人。こちらは近距離、中距離、遠距離戦闘に特化したメンバーと情報収集に長けたバックアップが存在する。どんな状況にも対応できる。
……ハズだった。
だったのに。
「な、なんだよ……これ……!!」
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