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階段を昇りきった俺達を待ち受けていたのはけして狭くはないビルのワンフロアを多い尽くすほどの人、人、人。
嵌められた、と思ったときには遅かった。そいつらは俺の姿を認めるや否や、一丸になって襲い掛かってきた。
まさか全員が能力者? いや、そんなことはありえない。大半は“非日常”の存在を知るだけの普通の人間だろう。おそらくは最近暗躍しているという異能力者を崇める秘密組織の支持者達。普通の人間とはいえ、それぞれがナイフやハンマーで武装している以上脅威の度合いでいえば能力者と大差ない。それにこの人数だ、どうすればいい。
俺の能力は強力だが、だからといって剣の扱いが上手いかと問われればそれはまったく別の問題だ。剣術の訓練は受けているが、まだまだ付け焼刃の域を超えない。二、三人をいなすのが精一杯だ。見れば後の二人の方も似たり寄ったりだ。初めて体験する圧倒的多数との交戦に戸惑いが拭いきれていない。二見さんに至っては能力自体が遠距離での運用を前提としたもので、まともに戦えていない。今は回避に集中することで何とかしているが、いつまで続くかは分からなかった。
いや、何よりも心配なのは彼女でもない。一番心配なのは戦闘向けの能力を持たず、身体も弱いレンだ。アイツは今一体どこに。
「いやー、ごめんよぉ? でも昔からよく言うだろ、騙される方が悪いって」
間延びした緊張感のない声が聞こえた。咄嗟に声のした方向に目を向けると、そこには。
「レン……!!」
俺達の仲間であったはずの小柄な少年が冷酷な笑みを浮かべ、敵ひしめく中に悠然と佇んでいた。
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