第2章:上 一方的再開

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 その日の後始末は日比谷に任せ、俺は自宅へと戻った。 『明日の昼以降にでもまた来てくれればいいよ』  日比谷はそう言って俺に自分の名刺を差し出した。“明日の昼以降に”ってそんなバイトじゃあるまいし、なんて思ったのだが、よく考えれば俺のよく知っている日比谷はそういう人間だった。《アスガルド》の任務内容は殺伐としているから、少しでもそれを和ませるように、という深い考えあってのこと――かどうかは知らない。そうだったらいいな、と俺が勝手に思っているだけだ。  ちなみにベストラこと雪城レンの個人情報だが、やはりというかなんというか出鱈目ばかりだったらしい。まあそりゃそうだ。  一周目の俺の体験では他に目立った裏切り者はいなかったはずだが、念の為情報部には全局員のデータを今一度再確認して貰っている。  ああ、それと。  日比谷と相談して俺のことは一応、“別の支部からやってきた助っ人異能者”としておいた。一度、世界が滅亡しているなんて話、日比谷くらいの変人でもなければどうせ信じないだろうし、黙っている方がいろいろスムーズに進むだろうという考えあってのものだ。  とりあえず《時間遡行》から一日目で、最低限やっておくべきことは大体出来たような気がする。  アスガルドの支部へ向かい、日比谷と再開する。  日比谷と情報を共有し、今後の対策を立てる。  俺の異能(世断刀)の性能を再確認する。  そして、裏切り者雪城レン=ベストラを支部内から追い出す。 「…………はぁ」  思わず溜息が漏れる。なかなか密度の濃い一日だった。  さてと。  明日は学校にも行かなければならない。勉強はともかく、学校という表側の世界に居場所を作っておくのは必要なことだと日比谷が言っていた。入学式から二日連続でサボるようなマネは避けたほうがいいだろう。  だから今日はもう寝る。  おやすみなさい。
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