第2章:上 一方的再開

3/17
前へ
/56ページ
次へ
 翌日。  俺は日比谷の命令に従い、学校へと向かっていた。  しかしよく考えてみれば俺は一周目の世界で高校三年の秋まできちんと学校に通っていた。本当に通わなければならないのだろうか。まあ、入学してしまっている以上、行かなければ目立つし、目立つことはアスガルドで活動していくにあたって差し障りがないこともない。三年間の勉強内容はある程度頭に入っているのでまあ、適当に通うことにしようかね。適当に。  実際的には高校四年生の俺である。留年ではありません、二周目です。なんつって。  俺が通う波奈南高等学校は語呂の悪さで有名だ。何だよ“なみなみなみ”って。  余談はさておき波奈南高校はその名に違わず並の学力と並の進学実績と並の部活動の強さを誇るごくありふれた高校だ。波奈市南区の、少し奥まったところにある為、通学路には学生の姿ばかりが目立ち、その他のサラリーマンや車の姿はあまりない。真新しい制服を窮屈そうに着込んだ集団は今年の新入生だろうか。顔には新しい環境への期待と少しの不安が浮かんでいる。  ……いや、俺も一応新入生なんだけどね。気を抜くとすっかり忘れてしまいそうで困る。  学校の校舎に入り、ついうっかり三年生の教室の方へ向かいそうになったところでそんなことを思い出した。  慌てて方向転換。一年生の教室は真逆の方にある。  ここで問題となるのはあれだ。俺は一体、一年何組なのかということだ。  昨日、入学式の日にクラス分けが発表されているので、新入生も迷わず自分の教室に入っていく。俺もその流れに加わりたいところなのだが、不幸なことに俺は昨日の入学式に参加していない。確かクラス分けは玄関前の掲示板に張り出されたはずだが、一日経った今日はすでに剥がされていた。確認することはできない。  さて、ここからどうしよう。いや、焦る必要は無い。何故なら俺は二周目。原則的に世界は俺が変えようとしなければ同じように進むと考えていいだろう。バタフライエフェクトなんていうモノも存在するので一概には言えないが、少なくとも昨日よりも前から決まっていたはずのクラス分けが一周目と違っているわけがない。つまり俺は一周目で一年生の時に通っていた教室に向かえばいいわけだ。  なんだ簡単じゃないか。 「そうと分かれば記憶を頼りに……って」  あれっ?
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加