第2章:上 一方的再開

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 結論から言うと、俺は一年生の時のクラスをすっかり忘れていた。  いやまあ普通だよね。一年間通っていた教室を忘れるなんて普通じゃないと言われてしまうかもしれないが、こちとらその次の一年間はまた別の教室に毎日通い、また次の一年間も別の教室に通っていたのだ。こんがらがって分からなくなってしまっても決して不思議ではない、俺の記憶力が悪いわけではない……ハズだ!! 「あー……これ、大丈夫なんだろうか」  仕方なく職員室で俺は、昨日欠席してしまった旨を話し、正しい教室を教えてもらった。そうだよ一年A組だよ。  しかし将来に不安が残る。二周目の俺にとって唯一のアドバンテージは一周目の記憶だ。昨日、裏切り者雪城レンの存在にいち早く気付き、能力を看破することで互角以上に戦えたのもそれは単純に“二回目”だったからだ。雪城レン=ベストラは敵組織の幹部クラスの実力者であり、一周目は裏切る前と後を合わせて五十人以上のアスガルド局員がヤツの手に掛かったとも言われている。俺だって初見でアイツに挑めば成す術なく倒されていただろう。それほどまでにアイツは強かった。  これから戦うことになるであろう敵もアイツに負けず劣らずの強敵ぞろいだ。記憶は何よりも大切なのに。  一抹の不安を感じながら俺は一年A組の教室に入る。入った瞬間、ところどころから好奇の視線を感じた。その視線が意味するものはこうだろう。 『あれ、こんなヤツいたっけ?』  まーそうなるわな。入学式初日からサボるヤツがいるなんてそうそう思わないだろうし、昨日のうちに自己紹介とかは終わっているのだろうか、もう既にいくつかのグループが形成されつつあって、俺はなんとなく肩身の狭い思いをする。友達百人できそうにはなかった。  やがて朝のチャイムがなり、教室に小柄な女性の先生が現れる。  いや“小柄”なんてものじゃない。“小さい”でもまだ語弊がある。“幼い”が一番しっくり来る。そんな先生。 「はい、それじゃあみんな席についてー。今日から授業が始まるよー」  見た目からの予想を裏切らないアニメ声で先生は言う。彼女は浅井あき先生、このクラスの担任だ。 「一時間目はHRだよー。クラスの係を決めるからねー」  げっ。
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