第2章:上 一方的再開

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 HRの係決めでじゃんけんに敗北した俺はめでたく保健係に任命されてしまった。一周目でもそうだった。  この保健係という仕事、地味な割に仕事量が妙に多い。保健室の手伝いとか『ほけんだより』の作成とか、応急手当講習への参加とか。できることなら回避したかった展開だが、一年生の時の自分のクラスも覚えていなかった俺が、この時のじゃんけんで人の出した手まで覚えているわけもなく、普段あまり出さない手の方が勝てそうだと思って、グーを出したら周りは全員パーだった。  ……やっぱり今日もサボっておけばよかったかもしれない。 「じゃあ保健係は黒沢くんということで。今日の放課後早速委員会があるらしいから参加してねー」  浅井先生は黒板にやけに丸っこい字で“くろさわ”と書きながら言った。他の係はもう大方決まっているので、俺がすることはもうないだろう。自分の席に深く座ってなんとなしに黒板を眺める。 「残念だったな、黒沢。まあ運がなかったと諦めろ」  言ってきたのは先ほど係を決める話し合いの際に知り合ったクラスメイト、伊藤幸太郎。  一周目の世界では特に仲良くした記憶もないが、冷静に思い返せば別にクラスの連中全般と特に仲良くした記憶がなかった。なんとも悲しい思い出である。というのも一年の頃は俺がアスガルドの局員として慣れない任務に奔走していた時期と重なるのでまあしょうがないといえばしょうがない。  俺は伊藤の言葉に適当に相槌を打ちながら、先ほどの浅井先生の言葉を反芻していた。  保健係は今日の放課後委員会に参加――。  保健係はまあ、面倒な仕事を押し付けられたに変わりないが、一応好都合なこともある。保健係――まあいわゆる保健委員だが、これに所属することで保健委員長の彼女に接触しやすくはなった。  三年生、二見湊先輩。  アスガルドにも敵組織にも所属していない在野の異能力者であり、俺が初めて監視任務についた相手だった。
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